矢崎エナジーシステム株式会社

環境システム事業部 営業統括部 東部営業部

宮本 将雄

 

キーワード

太陽熱・太陽光・再生可能エネルギー・補助金・木質バイオマス

課題 太陽熱の温水利用の技術とメリットについて
タイトル 「『熱は熱で』太陽熱システムの有効性」

~使いながら省エネする時代へ~

日時 10月18日(火)13:10~14:30
会場 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 セミナールーム
概要 太陽熱利用機器に関する基礎知識が習得できる。

  1. 太陽熱利用機器の種類及び給湯器との接続方法について
  2. 太陽熱利用機器のメリットについて
  3. 「公共・産業用」ソーラー利用システムについて
参考書&

参考WEBサイト

・矢崎グループの太陽熱利用機器

http://solar.yazaki-group.com/

備考

  

1.概  要

本稿は2016年10月に太陽熱システム認知度向上を目的として実施した、太陽熱説明会で使用した講義資料を要約したものです。講義資料と照らし合わせながら、本稿に目を通して頂ければ、太陽熱システムや矢崎の取り組んでいる活動に対してより理解を深めることができます。

 

2.太陽熱システム概略

太陽熱システムとは、太陽エネルギーを利用して水を温め、給湯や冷暖房に利用するシステムを指します。

ガスや電気の節約になると共に二酸化炭素を排出しないため、太陽光発電と並び、地球温暖化対策の面からも注目されています[1]

システムを構成する主な機器として、太陽の熱を集め、熱媒を温める集熱パネルと、温められた水や不凍液を貯める貯湯槽が挙げられます。

太陽熱システムは、自然循環システムと強制循環システムに分類する事ができます。自然循環システムとは、集熱パネルと貯湯槽が一体化しており、上部に位置する貯湯槽内の水が下部に位置する集熱パネルに流れ、集熱パネルで沸き上がり湯になると、自然循環作用により貯湯槽内に湯が貯まり、屋根からの落差を利用して湯を供給します。

一方で強制循環システムの場合、集熱パネルは屋根に貯湯槽は地上に分離して設置されます。ポンプを使用して、集熱パネルと貯湯槽の間に不凍液を循環させ、温められた不凍液と水を熱交換して、湯を作るシステムを指します。

貯湯槽に水を貯めた際、その重さは200kgを超え、自然循環システムの様に貯湯槽が屋根上に置かれる場合、重荷で屋根に負担を与える恐れがあります。屋根への負担軽減及び外観性の観点からも、現在は強制循環システムが主流となっています。

強制循環システムの概略は、別紙講義資料P.8を参照にして下さい。

 

3.太陽熱と太陽光の比較

太陽熱システムは太陽光発電と比較して、下記の特徴が挙げられます。

 

【メリット】

  • 太陽エネルギーは電力へ変換するより、 熱へ変換する方が高効率である
  • 太陽光発電パネルと比較して、同等のエネルギーを狭い面積で得る事が可能
  • 太陽光発電パネルと比較して、影による影響が少ない
  • 貯湯槽内に200Lのタンクを保有しているため、災害時に200Lの非常用水を取り出す事が可能

 

【デメリット】

  • LPガスを使用している地域と都市ガスを使用している地域の間で節約金額に差が出てしまう
  • 使用用途が給湯・冷暖房に限られてしまう

 

4.太陽熱が適した施設とは

太陽熱システムが利用されている事例は戸建住宅に限りません。給湯エネルギーが施設のエネルギー

消費割合の4分の1を占めている高齢者施設への設置も同様に適しています。高齢者施設が太陽熱システムを導入する事で近年施設利用者の増加に伴い、増加している給湯消費に係るコストを削減する事ができます。

高齢者施設以外にも教育施設に導入し、環境エネルギー教育を実施する事例や温水プール等スポーツ施設にも採用されており、様々な施設において太陽熱システムがエネルギーコスト節約に貢献しています。

 

5.矢崎製太陽熱システム

高齢者施設における給湯負荷の傾向として, 下記の特徴が挙げられます。

  • 入浴介護のため給湯負荷が主に午前中に集中する
  • 15時以降は給湯負荷が非常に低いため、高齢者施設の給湯負荷は入浴介護に占める割合が非常に大きい
  • 午前中に給湯負荷が集中するため、既存ボイラーの定格能力を上回り給湯温度を維持する事ができない。所謂湯切れ現象が発生する場合がある(特に貯湯タンクへの給水温が低下する冬季)

 

上記の様な傾向を持つ高齢者施設に最適な製品が矢崎の「お湯ジョーズ」です。従来の太陽熱システムは日中集熱したお湯を同日夜の給湯負荷に使用します。しかし、「お湯ジョーズ」は前日午後から集熱を開始し、集めたお湯を最も給湯負荷の高い翌日午前中の入浴介護時に使用します。その後、午後から集熱を再び開始するというサイクルで動作しています。

冬季はボイラー定格能力を超えた分の給湯負荷を「お湯ジョーズ」で集熱した湯で賄い、湯切れ現象を防ぐ働きをします。また湯切れ現象発生の心配が少ない夏季においては、従来の太陽熱システムの様な使い方に切替える事も可能な仕様となっています。

その他, 設計自由度が高い「スーパーブルーパネル」や低予算で導入可能な「エコソーラーマルチ」、そして一般家庭用に製造されている各種太陽熱システムが現在の矢崎の太陽熱システム主力製品です。

太陽熱システムに関して、定期的なメンテナンスは特に必要はありません。熱媒に不凍液を採用している場合には約7年ごとに不凍液の交換が必要となります。また製品の設計耐用年数は15年程度となります。

 

6.補助金

現在、太陽熱システムを導入する際に活用できる補助金として、環境省が掲げている「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」が挙げられます。高齢者施設等を運営する非営利法人には導入費用の2分の1を補助します。実施期間は平成28年度から32年度までとされています[2]

各自治体においても補助金を設け、太陽熱システムの設置を促す取り組みがされています。その中でも、東京都は太陽熱普及活動に注力しています。東京都の掲げている補助金として家庭用太陽熱システム向けの「家庭におけるエネルギー利用の高度化促進事業」と事業者向け「地産地消型再生可能エネルギー導入拡大事業」が挙げられます。家庭用太陽熱システムには導入費用の3分の1を、事業者向け太陽熱システムには導入費用の3分の1(事業者の規模によって6分の1になる場合もある)が補助されます[3]

また各市区町村単位においても補助金が交付されています。詳細に関しては別紙講義資料または各市区町村ウェブサイトより確認する事ができます。

 

7.矢崎の環境への取り組み

矢崎は太陽熱システム以外にも環境に配慮した製品を製造しています。その内の1つとして、木質ペレットを燃料として冷暖房を行う事ができる「木質ペレット焚バイオアロエース」が挙げられます。本製品を主軸として高知県梼原町および地域住民と協働して、木質バイオマス地域循環事業に取り組んでいます。

森林の間伐や木材製作所で生じた端材をペレットに加工する「ゆすはらペレット株式会社」のペレット工場が2008年に稼働を開始しました。生産されたペレットは梼原町立梼原学園に設置された「木質ペレット焚バイオアロエース」の燃料として活用されており、木材とエネルギーの地産地消を実施しています。

 

参考資料

[1] 「TOKYO太陽エネルギーポータルサイトhttp://www.tokyosolar.jp/introduction/thermal/(2017/1/17参照)

[2] 「公益財団法人日本環境協会https://www.jeas.or.jp/activ/prom_16_00.html(2017/1/17参照)

[3] 「クールネット東京https://www.tokyo-co2down.jp/(2017/1/17参照)

 

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