つくば牡丹園 つくば薬草研究所

農業生産法人 株式会社茎崎観光農園 代表

茨城大学大学院農学研究科地域環境科学専攻

関 浩一

 

キーワード

発酵技術・発酵革命・有機物全てのリサイクル・有効的活用・持続農業

課題 メタン発酵・バイオマス利用技術Ⅱ

― バイオガスプラントを支える液肥利用と残渣利用

タイトル 「廃棄物のリサイクル資源化」
日時 11月10日(木)14:50~16:00
会場 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 セミナールーム
概要 メタン発酵残渣から有効的な堆肥製造の基本的な知識が習得できる。

  1. 製造方法
  2. 作物別の資材選び
  3. 事例と技術の概要
参考書&

参考WEBサイト

備考

 

1.はじめに

廃棄物は、日本国内においても日々大量に排出されており、廃棄方法や環境への影響など様々な問題が挙げられている。廃棄物に新たな価値を見つけ有効活用することで、環境の問題だけではなく廃棄物をリサイクルさせる資源化再利用は、循環型社会の新しい形成への一因になっていく。

資源化再利用方法には、堆肥・肥料化(家庭生ゴミ)、飼料化、油脂及び油脂製品化、バイオガス化(メタン化)などがあるが、本報ではメタン発酵後の残渣堆肥化の問題解決と、より効果的な堆肥化を探求し、産産学官の連携により、循環型社会、持続可能な社会、持続可能な農業を可能にするための資源リサイクルの現状を報告する。

 

2.メタン発酵残渣の利用方法

2.1 メタン発酵残渣の現状

メタン発酵残渣の利用について、現在は液体(メタン発酵消化液)を農地に利用している方法が一般的であるが、本報では土浦市バイオマスタウン構想日立セメント株式会社神立資源リサイクルセンターバイオプラントのメタン発酵残渣液体を固体(紛体)にしたものを紹介していく。

固体化は液体よりも濃縮されるため成分が高く、また、運搬、施用の仕方も容易である。しかし、固体化した堆肥には大きな問題が2つある。1つ目は塩類濃度である。固体は濃縮されているため塩類濃度も濃縮され濃度が高くなる。2つ目は臭気である。臭気は、液体では気になる程度であるが、固体では不快な臭気になる。その他の問題点は、メタンガス抽出後の残渣では液体、固体を問わず、炭素がメタンに取り入れられ炭素含有量が少ない(地力の向上、持続性には一定の炭素が必要)。この問題を解決なしには農業への再利用は限られた作物や施肥環境(住宅地から離れた農地)にのみの限定使用となってしまう。

2.2 固形残渣物堆肥化の問題解決

高塩類濃度と不快な臭気、低炭素含有量を解決する方法は、残渣堆肥を有効資材を使用し2次発酵を行うことによって実現できる。高塩類濃度を下げることは塩類濃度がなく且つ土壌に有効な有機物で希釈すること、不快な臭気をなくすことはPHをさげることや微生物を利用すること、低炭素は高炭素資材を添加することで、それぞれの問題が解決される。

2.3 2次発酵と資材

2次発酵は、固体メタン発酵残渣現物(残渣堆肥)をベースにそれを希釈し発酵させるための資材、セルロース・リグニン質等の有機物 (ウッドチップ、バンブーチップ、もみ殻、稲藁、麦藁、ダイズ粕、落花生粕、コーヒー粕、豆腐粕、あらゆる作物の搾り粕、刈り草、落ち葉等をなるべく細かく粉砕した物)、米ぬか、ふすま、大豆粕、海藻、カニ殻、蛎殻、黒糖蜜、微生物(糸状菌、乳酸菌、放線菌等)、酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼを含む):(発行革命)、粘土、籾殻くん炭等を使用する(上記の資材全てを使用しなくても良い、放線菌を生成することにより、後の病気の軽減に繋がる)。

2次発酵には、発酵を行うハウスなどの施設が必要となる。その他に必要な機械類は、農業用トラクター、動力噴霧器、ローダーまたはバックホー、資材で大きな刈り草を使用する場合にはハンマーナイフモアなどの粉砕機が必要となる。

2次発酵の期間は、残渣堆肥に混ぜる資材の発酵期間が3~5週間、残渣堆肥と混和して2~3週間である。

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写真 ハウスの中で河川敷の刈り草をハンマーナイフモアで粉砕

 

2.4 2次発酵コンポストの試験結果

2.4.1 2次発酵を行うことにより塩分濃度が表1のように減少する。

表1

塩分 EC Na PH 水分
ms/㎝ ppm
市販堆肥 0.77 11.3 2417 7.83 27.8
汚泥堆肥 0.51 7.93 750 7.74 17.8
残渣堆肥 0.53 8.17 470 7.78 42
2次発酵堆肥 0.29 4.35 165 7.68 36.1

2.4.2 2次発酵後の臭気は図1の通り、臭気測定装置で分析した結果、残渣堆肥が999を示したのに対し、2次発酵堆肥は11と大きく改善された。

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図1 残渣堆肥と2次発酵堆肥の臭気比較

2.4.3 化成肥料と残渣堆肥、2次発酵堆肥の投入量の違いによるコマツナの重量比較は図2の通りである。

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図2 コンポスト投入量の違いによるコマツナの重量比較

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3.おわりに

再利用する資源は、まだほとんどが焼却されているのが現状である。その資源は工業用食品生ゴミ、家庭用生ゴミ、森林緑地から出る剪定ゴミ、農業から出る未利用物、畜産業から出る畜糞、下水処理から出る汚泥等たくさんあるが、これらは全て発酵技術により有効な資源になっていく。これらよりリサイクルさせた資源を生命の維持を担う農業資源に変換させることが地球環境型リサイクルの理想であり、この理想を実現させていかなければならない。このことはすなわち、循環型社会、循環型農業であり、持続可能な農業へと繋がっていく。またコンポストを製造する新たな産業ができることにより地域が活性し(地方再生)、高齢者社会における雇用の場が生まれ(働くことにより健康が維持され医療費の削減)、持続可能な社会へとも同時につながっていくと考える。

 

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