京丹後市 農林水産環境部 環境バイオマス推進課

 係長 松本 優

キーワード

メタン発酵・バイオガス発電・再生可能エネルギー・資源循環・液肥

課題 再生可能エネルギーを地域に広げるには

―「環のちから」のまちづくり ―京都府京丹後市―

タイトル 「バイオガス発電の取組み」

~資源循環都市の実現~

日時 12月9日(金)14:40~16:00
会場 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 ライブラリーホール
概要 「京丹後市エコエネルギーセンター」では、家庭生ごみや食品廃棄物を原料にしてメタン発酵によるバイオガス発電を行っています。ガスを取り出した後の消化液は全量を農業利用しているとともに、発電した電力は電力事業者に売電しています。廃棄物から電気と肥料の2つの価値を生み出す資源循環の取組みを紹介します。
参考書&

参考WEBサイト

・京丹後市エコエネルギーセンター

https://www.city.kyotango.lg.jp/kurashi/kankyo/kankyo/eco_energy/index.html

・京丹後市バイオマス産業都市構

https://www.city.kyotango.lg.jp/shisei/shisei/keikaku/biomasssangyotoshi/index.html

備考

 ・京丹後市エコエネルギーセンターは、京丹後市が所有運営するバイオガス発電施設。エコエネルギーセンターでは、従来であれば可燃ごみとして出され、ごみ処理施設で焼却処分されていた食品廃棄物や家庭生ごみをメタン発酵させて、電気と肥料の2つの資源を生み出す取り組みを行っている。

・エコエネルギーセンターは、平成15年度から平成19年度にかけて行われたNEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構による「新エネルギー等地域集中実証研究」の中核施設として平成17年に建設された。

・この実証研究プロジェクトは、太陽光発電や風力発電のような自然エネルギー(天候などの自然条件に左右されやすいエネルギーと)と比較的コントロールし易いバイオガス発電を適正に組み合わせ、これらを制御して安定的に電力供給ができるシステムを構築するために必要なデータ収集を目的として実施されたプロジェクト。

・平成20年3月にこのプロジェクトが終了したため、翌21年に京丹後市がNEDOからこの施設を無償で譲り受け、京丹後市が運営する「京丹後市エコエネルギーセンター」として再スタートした。

・施設概要は資料6ページのとおり。容量が2,300立米あるメタン発酵槽が施設の心臓部。6ページの左側上段の大きな槽の写真。その下の写真が容量3,000立米のバイオガスを貯留するガスホルダー。

・メタン発酵槽内は55℃(高温発酵)に保たれ、食品廃棄物や家庭生ごみが微生物の働きにより分解され、その過程でバイオガスが発生し、そのバイオガスにより発電するという仕組み。

・建設費は、NEDOの支出額が施設本体の建設費、土木工事等で23億1千7百万円、京丹後市の支出額が用地買収費、放流管敷設費等で2億2千2百万円。

・資料7ページのシステムフロー図。原料として食品廃棄物や家庭生ごみを受け入れる。施設の処理能力は日量100トン。現在の受入日量は20~30トン。月300~400トンの受入量で推移している。

・受け入れた原料をメタン発酵槽に送り、この中で微生物の働きにより分解されるとバイオガスが発生する(上の青いライン)。バイオガス発生量は日量1,400ノルマル立米。取り出したバイオガスを容量3,000立米のガスホルダーに貯留。

・ガスホルダーからガスエンジン式発電機に送られバイオガスが燃料となって発電機を駆動させる仕組み。

・発電機は、80kWの出力のものが5台設置してあるので、フルに稼働すると計400kWの出力。自動制御されており、ガス貯留量に合わせて発電機が稼働する仕組み。

・発電機の稼働中は、1台あたり600~700℃の熱が発生するが、これを温水に変換しメタン発酵槽を55℃に加温するための熱源として利用しているほか、施設内の暖房設備、駐車場の一部に採用されているロードヒーティングに利用されている。

・下の茶色のライン。メタン発酵槽からバイオガスを取りだした後には必ずメタン発酵消化液とよばれる液体が残る。食品廃棄物や生ごみを微生物が分解した後の液体。

・以前は、この消化液に大量の薬品を添加して浄化し排水処理していたが、浄化するために使用する薬品代と電気代が施設全体の収支を圧迫していた。

・この排水処理費用を削減し施設の収支改善を行なうため、平成24年12月に排水処理設備を全面停止し、発生するメタン発酵消化液の全量を農業利用して資源循環型農業を展開する取り組みを行っている。

・以前は、メタン発酵消化液を脱水して固形分のみを取りだして乾燥させ堆肥として利用していたが、現在は液肥としての利用のみ。

・資料10ページ。液肥の窒素量は約0.22%とごく薄い窒素肥料。そのため、水稲だと10aあたり3トンから4トンの液肥を水田に散布する必要がある。散布は専用のクローラ車により散布。

・主に水稲基肥、牧草、一般野菜等での利用。平成27年度実績で213ヘクタールの田畑に7,733トンの液肥を散布した。

・資料12ページ。総発電量・施設内電力使用量・売電量のグラフ。青が総発電量。緑が施設内電力使用量。赤が売電量。

・平成22年度では緑の施設内電力使用量が一番多くて1,800千kWh、次に青の総発電量で1,108千kWh。排水処理に使用する電力が多すぎて、この施設の発電量よりもはるかに多くの電力を施設内で使っていた。発電施設といえども、施設内で使用する電力すら十分には賄えず、足らずは電力会社から電力を購入して施設を稼働させていた。

・しかし、平成24年12月に排水処理工程を廃止したため、平成27年度実績では、青の総発電量72万8千kWhに対して、売電量が53万kWhと総発電量の73%を売電に回すことができている。それも施設内で使用する電力を21万7千kWhに抑えることができているから。排水処理をしないことにより、効率的な運転モードに切り替えることができた。

・さらに、平成25年3月に固定価格買取制度(FIT)の適用を受け、有利な単価(39円(税込み42.12円)/kW)で売電できており収支改善の一翼を担っている。

・資料13ページ。平成27年度の運営収支。収支の不足額を市の指定管理委託料で補っている状況。引き続き、収支改善を行ない平成30年度には指定管理委託料ゼロを目指して取り組んでいる。

・資料14ページ。家庭生ごみ資源化の推進。平成22年度から市内家庭生ごみをエコエネルギーセンターで資源化するモデル実証プロジェクトを実施している。今日現在で、市内12地区約1,400世帯から出る生ごみをエコエネルギーセンターで資源化している。

・この取り組みでは、まず家庭の台所レベルで、生ごみを他の可燃ごみときっちり分別して出してもらう必要がある。

・エコエネルギーセンターの発酵槽では分解できない卵の殻、貝殻、醤油の小袋等は分別してこれまで通り可燃ごみとして出してもらう。

・分別した生ごみは専用の収集袋に入れて、他の可燃ごみと同じ収集日にごみステーションに持ち込んでもらう。

・資料15ページ。原料受入状況。家庭生ごみは36トン。受入量全体の0.8%。市内循環を高めたいという考えから、平成30年までに市内全域の家庭生ごみをエコエネルギーセンターで資源化する計画で普及拡大を行っている。

・平成26年9月から市内の全小中学校・幼稚園・保育所の給食残さ(調理くず)もエコエネルギーセンターで資源化している(30トン、0.7%)。また、自分達の給食の調理くずがエコエネルギーセンターで電気と肥料として資源化されて、その肥料で農家がお米を栽培するという資源の循環を体感してもらうために、液肥で栽培されたお米を一部の学校給食で提供するといった食の循環の取り組みも行っている。

・それ以外はほぼ市外からの産廃系の食品廃棄物。芋くずが最も多く、その他は野菜くず、廃飲料、おから等。

・資料16ページ。九州や北海道の先進地域では、下水汚泥、し尿、畜産ふん尿の処理などの行政課題を解決するための一手法としてメタン発酵によるバイオガス発電に取り組んでいて、地域になくてはならない施設となっている。

・その点、京丹後市エコエネルギーセンターはもともとあった実証研究施設を京丹後市が譲り受けたものなので、市内で発生するバイオマスのみで原料収支が成立する設計になっておらず(広く関西圏から食品廃棄物を原料として収集する計画)、市が抱える行政課題を解決するための「地域になくてはならない施設」になりきれていない。

・昨年、施設全体の修繕計画を立てるための耐用年数調査を行ったが、今後30年間に数十億円の修繕費が必要との見込みがでている。

・行政が行う業務である以上、エコエネルギーセンターで生ごみを資源化するメリットと、今後発生するであろう修繕費等のコストとを比較し、将来にわたって公費を投入するに見合う事業かどうかの見極めをまさに今、求められている。

 

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