東亜グラウト工業株式会社

管路メンテグループ技術開発室 室長

田熊 章

 

キーワード

下水熱・再生可能エネルギー・小口径型熱回収システム・未利用熱・管路更生・B-DASH・融雪・給湯・空調

課題 現地研修

下水熱の地域利用

タイトル 「ヒートライナー工法」

~中小口径管路内設置型下水熱利用システムの実証試験状況について~

日時 11月15日(火)13:00~15:00
会場 十日町市下水処理センター(十日町市上下水道局)
概要 下水熱についての知識を習得できる。
参考書&

参考WEBサイト

・東亜グラウト工業株式会社 ホームぺージ

http://www.toa-g.co.jp/index.php

・ヒートポンプにより熱を活用する書籍

備考

  

1 はじめに

エネルギー資源の乏しい日本では、限りある資源の有効活用化を考えることが重要である。

私たちの身近に存在する下水道は、水インフラとして既に管路が張り巡らされており、その管路からエネルギーが回収できれば新たな熱エネルギー供給源として期待できる。

しかも、下水道の管路網は、人口密集地に集結しており多様化する人々のライススタイルから下水の流下があるならば長時間にわたって採熱(排熱)することが可能である。

採熱システムを構築すれば、従来ならば排出していたエネルギーを永続的に回収し続けることが可能となるのである。

また、下水道管路は、敷設後50年を経過した物が増加しており、老朽化による陥没事故からインフラを守るためにも早急に管路更生にて延命するべきとの声が年々高まってきている。

 

本稿は、下水熱を活かした「空調」、「融雪」の運用が有効であることを確認した報告である。

また、この研究の目的は、中小口径管路内設置型下水熱利用システムの可能性として、実運用を通じて技術的課題や有効性を検証し、管路更生を行いながら下水熱を活用するシステムとして世の中に普及させることである。

                        

2 下水熱の活用

下水の温度は、図-1下水と外気の平均温度比較 に示すとおり、年間を通して温度の変動幅が小さく冬は暖かく夏は冷たい傾向にあり、生活に用いる温度域に近い。

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従来のエアコンや冷蔵庫に代表される空気式熱交換器は、外気を利用しているため気温の変動幅が大きく、その分、熱交換器に負荷がかかるため消費電力が大きくなるのである。

また、水(下水)は、空気よりも伝熱性に優れるため水熱源式ヒートポンプを活用する下水熱の技術は合理的と言える。
下水熱を空調に利用する場合は、熱の移動が冬期と夏期によって異なり、冬期は下水から熱を採取し暖房として利用し、夏期には熱を下水に放出することで冷房として利用するのである。

また、下水熱を給湯に用いる場合は、夏期や冬期に関係なく熱を回収しつづけるのである。

つまり、下水熱の活用技術とは、安定した温度である下水の特性を活かすことで、高効率にてヒートポンプの運転が可能となり消費電力を抑制することが可能となる省エネ技術と言える。

この様に、安定した温度の下水を利用する合理的な構想は、過去にも活用されることがあったのだが、下水処理場やポンプ場の近傍での利用が中心となり、離れた場所では送水管路などの施設が必要となることから、建設コスト等が増大するという懸念があった。また、処理水とはいえ、下水そのものを利用することから臭気等の対策が必要であった。

3 中小口径管路内設置型の下水採熱技術

本技術は、Φ800mm以下の中小口径管路に設置する管路更生および下水熱の利用技術である。

硬化する前の更生材料「ライナー材」は、手で触ると菱餅程度の弾力性を有する筒状の形状である。材質は、耐酸性ガラス繊維と光硬化性不飽和ポリエステル樹脂から構成されており、これを下水道管路内へ引き込むのである。既設管路内へ引き込んだ更生材の内部へ大量に空気を送り込み、空気圧にて風船の様に拡径させることで、既設管の内壁面に更生材を密着させるのである。

そして、更生材内の空気圧を保ったまま光を照射する機械を管内部で走行させることにより、図-2熱回収施設(管路更生および熱回収管)に示すとおり、更生材を硬化させて既設管の内側に高強度の新設管を構築できるのである。

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図-2熱回収施設(管路更生および熱回収管)

つまり、図-3システム概要図に示すとおり、熱回収用の熱交換マットを事前に管底部に設置しておくだけで、下水管路を流下する水深の変化に影響せず常に安定して管底から熱の採取(排出)が行えるのである。

3-1 空調利用

空調の実証は、新潟県十日町市西保育園の事務室(約26m2)にて、下水熱を用いた空調として一年間の利用に成功した。

施設の概要は、既設管径Φ800mmの人孔間距離56.7mから下水熱を回収し利用施設まで輸送させて利用したのである。

具体的には、①熱回収施設、②熱輸送施設、③計測機械室、④熱利用施設の4つの施設から構成されている。

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結果は、冬期での利用が長く4.0mを超える積雪量の中で11時間/日(7:30~18:30)を稼働させ、合計2,000時間を超える運転となった。

下水温度は、平均17℃(12~24℃)と安定しており、日中の天候変動にも問題なく対応できることが確認できた。

また、計測の結果は、低温環境での空気熱源式のCOPよりも高効率で運転でき、運転費用(ランニングコスト)を抑えることができることがわかった。

また、年間をとおして問題なく運転できたのは大きな収穫と言える。

空調運転は、施設に常時勤務する方によって毎日操作され安全に管理できたのである。

3-2 融雪利用

融雪の実証は、空調施設に隣接する駐車場内(13.5㎡)に設置し、翌年から検証を行った。

一般に、ロードヒーテングは、融雪および凍結防止の施設として全国的に利用されている。

代表的なものとしては電熱式と温水ボイラーを用いる方式がある。

電熱式は、路面下の地中内に設置した通電線に電気を流し、その電気を熱に変換することで路面温度を上昇させ、雪を溶かし凍結を防止するシステムである。

一方、温水ボイラー式では、地中内に通電線の代わりに放熱管を埋設し、その管内に、ガスや灯油などを燃料とした温水ボイラーで温めた不凍液等を循環させることで路面温度を上昇させる仕組みである。

両者ともにランニングコスト(電気代・燃料代)が課題となっている。

本施設は、下水熱源とヒートポンプの組合せにて融雪を行った。

平成28年1月下旬には、短時間の降雪ではあったが設計発熱量の倍となる6㎝/時間の降雪に対し、図-4施設の融雪状況 に示すとおり確実な融雪効果を確認した。

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図-4施設の融雪状況

従来式と比較することで運転費用を抑える効果があることが判明した。

 

4 おわりに

今回は、下水熱を活かした「空調利用」、「融雪利用」としても運転が可能であることを確認し、更に「給湯利用」下水採熱システムへの導入へも成功している。

今後は、実績を増やすことで様々な環境や用途にて、安定した高水準の運用が可能となるシステムであることを確認しながら、更なる発展を目指したいと考えている。

 

問合わせ先 : 東亜グラウト工業株式会社 技術開発室  田熊 章

〒160-0004 東京都新宿区四谷2-10-3 TMSビル5F

TEL 03-3355-1531 FAX 03-3355-3107 E-mail : akira.taguma@toa-g.co.jp

 

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