一般財団法人日本有機資源協会 事務局 次長
菅原 良

キーワード

バイオマス、バイオマス産業都市、FIT

課題 バイオマス、様々な利用
タイトル バイオマス、様々な利用
日時 10月 20日(金)13:30~16:00
会場 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 セミナールーム
概要 1.バイオマスを取り巻く現状
2.バイオマスエネルギーの活用効果
3.バイオマスのエネルギー活用事例
4.バイオマスエネルギー活用事業の課題・対策例
5.バイオマスエネルギー活用に関する参考資料・情報例
参考書&

参考WEBサイト

・「バイオガス化マニュアル」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「バイオガスシステムの現状と課題」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「畜尿・消化液処理の現状と展望」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「コンポスト化マニュアル」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「地域バイオマス資源化システム解説書 -バイオマスタウン構築に向けて-」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「バイオマス活用ハンドブック」(一般社団法人日本有機資源協会)
・「バイオマスエネルギー」(横山 伸也・芋生 憲司 共著)
・バイオマスの活用の推進(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/
・地域バイオマス利活用支援事業(全国段階)(一般社団法人日本有機資源協会)
http://www.jora.jp/tiikibiomas_sangyokasien29/index.html
・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門地域エネルギーユニット 資源循環システム担当成果(平成13~27年度)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/introduction/chart/0601/index.html#rink2
・なっとく!再生可能エネルギー(資源エネルギー庁)
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/
・肥料・土壌改良資材(独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC))
http://www.famic.go.jp/ffis/fert/index.html
・一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協
https://www.jwba.or.jp/
・バイオガス事業推進協議会
http://www.biogas.jp/

バイオマス、様々な利用

1.バイオマスを取り巻く現状(施策・産業都市)

わが国のバイオマスに関する施策は、バイオマス・ニッポン総合戦略(2002年12月閣議決定)、バイオマス活用推進基本法(2009年6月制定、同9月施行)、バイオマス活用推進基本計画(2010年12月閣議決定)を経て、バイオマス事業化戦略(2012年9月バイオマス活用推進会議決定)により「バイオマス産業都市構想」に基づく取組が進められており、61地域(79市町村)で策定され事業化・実現化が進んでいる。また、新たなバイオマス活用推進基本計画(2016年9月閣議決定)により、バイオマスの高度利用、多段階(カスケード)利用、熱利用の推進が図られている。

世界的にはパリ協定に基づく地球温暖化対策、SDGsに基づく持続可能な取組、RE100など企業による再生可能エネルギーの取組、ESG投資の拡大等が行われており、2020東京オリンピック・パラリンピックでも持続可能性に配慮調達コードが示されるなど、持続可能な資源であるバイオマスの活用が期待されているところである。

 

2.バイオマスエネルギーの活用効果(バイオマス活用の意義)

バイオマスは、バイオマス活用推進基本法において「動植物に由来する有機物である資源」と定義されているように、古来、人間の生活(衣食住)に欠かせない国内生産が可能な貴重な資源であり、太陽エネルギーと二酸化炭素を利用する生物の光合成により再生可能(カーボンニュートラル)であることから、前項の通り地球温暖化防止対策としても有効な再生可能エネルギーの一つとして活用が進められている。また、バイオマスは農林漁業などの一次産業から発生するものも多いことから、バイオマスの活用は農山漁村や中山間地等の地域活性化にも資する。

一方で、バイオマスの循環は太陽光と二酸化炭素だけでは成立せず、土壌や水を媒介として植物により行われることが基本であり、その生長には窒素や、国内利用のほぼ全量を輸入に依存しているリン(リン酸)、カリウム等の肥効成分が必須である。したがって、バイオマスをエネルギーとして利用する場合でも、その原料であるバイオマスを生産するためには、地下鉱物資源ではなくバイオマスを肥料として有効に活用することも重要である。

 

3.バイオマスのエネルギー等活用事例

バイオマスの活用方法は大きくマテリアル利用とエネルギー利用に分類されるが、バイオマス利用の基本は「物」としてのマテリアル利用であり、エネルギー利用はその余剰物や廃棄物をするカスケード利用(多段階利用)により行われるべきである。

しかし、東日本大震災以降は災害時の非常用や分散型の地域エネルギーとしてバイオマスの活用が注目され、特に、2012年7月に導入された電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ法)に基づくFIT制度が採算性改善に寄与することから、バイオマス発電事業も増加している。

国のバイオマス事業化戦略でもエネルギーとしての利用を推奨しており、新たな「バイオマス利用技術の現状とロードマップ」等の公表により、実用化段階にある様々な利用技術の導入に支援を行っている。

本講義では、木質バイオマス、家畜排せつ物燃焼発電、炭化、バイオガス化(メタン発酵)、バイオディーゼル燃料(BDF)、飼料化、堆肥化(コンポスト化)・肥料化(リン回収)、バイオマス製品(バイオマスプラスチック)、その他(固形燃料、バイオエタノール)について、技術の概要と国内の先進事例を紹介した。

 

4.バイオマスエネルギー活用事業の課題・対策例

バイオマスエネルギーは、原料であるバイオマスの特性から、安定的なベース電源になる、廃棄物削減や地球温暖化防止など多様な相乗便益を有する、産業や雇用の創出を含む地域活性化に資する、熱利用(熱電併給)が可能である、直接燃焼が難しい水分を多く含むバイオマスを原料としてエネルギー化できる(メタン発酵)等の様々な効果を有することから、石炭・石油・天然ガス等の化石資源エネルギーや原子力エネルギーを代替し得ると考えられるため、その取組が広がっている。

一方で、化石資源エネルギーや原子力エネルギーと同じ資源依存型であることや、多様な関係者(ステークホルダー)が存在することから、持続可能なバイオマス事業のためには、以下のような点に留意する必要がある。

1)立地、原料調達、エネルギー・製品利用に関する多様な地域関係者の合意形成と進捗管理

・自治体と連携した地域説明の開催や地域協議会の設立

・勉強会の開催による認知度向上や人材育成

・原料調達組織の設立、等

2)廃棄物等の地域資源の有効利用による安定的な燃料確保・調達

・人口減少や3Rの推進等により、2030年までにバイオマス賦存量が現在の2/3程度になると予測

・利用率が低い食品廃棄物や未利用バイオマス(林地残材、農作物残さ等)を利用、等

3)適正かつ安定した変換技術によるエネルギー化と利用先確保(特に熱利用)

・適正規模による設計(小型化、低コスト化)

・環境対策(法令遵守、適正な環境技術の導入、地域住民の合意形成、等)

・新技術の導入(実証による技術確立、十分な試運転・立ち上げ期間の確保、等)

・発電事業の場合は系統連系対策や、FIT制度を活用する場合はポストFITも検討

4)副産物・残さの利用による農畜産業振興(利用できない場合は適正処理)

・消化液や燃焼灰の肥料利用

・消化液は固液分離により固形分を燃料利用

・直接利用できない場合はリン(P)やカリウム(K)等の元素回収、等

5)各種の資金調達や支援の活用等による事業採算性の確保

・ファンド(グリーンファンド:環境省系、A-FIVE:農林水産省系など)

・補助金(目的を工夫して獲得)

・金融機関(地銀、信金等)の活用

・付加価値化(リース、サービサイジング[熱エネルギーサービス]、ESCO、カーボンオフセット、二酸化炭素排出量取引、グリーン電力証書・グリーン熱証書、等)

・バイオマス活用の取組の観光資源化

 

5.バイオマスエネルギー等活用に関する参考資料・情報例

バイオマスは種類や利用方法が多様であり、関係者(ステークホルダー)も多様であることから、数多くの施策・調査・研究・事例等が、書籍等の刊行物やインターネット等で誰でも入手できる情報として公開されており、その一部として下記のような資料・情報例を紹介した。

1)バイオマス活用の計画策定

2)固定価格買取制度や系統連系等の施策

3)国による補助金等の支援策

4)木質バイオマス発電

5)バイオガス化

6)汚泥の活用

7)コンポスト化

 

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