一般財団法人中之条電力 代表理事
株式会社中之条パワー 代表取締役
山本 政雄

キーワード

再生可能エネルギー推進条例、自治体の再エネ事業、地域新電力、小売電気事業者、電力自由化、シュタットベルケ
課題 地域における再生可能エネルギー活用と地域電力を通じた電力の地産地消
タイトル 自治体が取り組む新電力、中之条電力の設立とその活動
日時 11月 29日(水)13:50~14:30
会場 県立図書館2階 視聴覚ホール
概要 1.再生可能エネルギーによるまちづくり

2.自治体による再生可能エネルギー活用事例

3.一般財団法人中之条電力の設立と活動

4.電力自由化と地域新電力をめぐる動向

5.電力の地産地消における今後の課題

参考書&

参考WEBサイト

「再生可能エネルギー 開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック」(NTS、水上貴央監修)

「環境自治体白書2016-2017年版」(生活社、中口毅博・環境自治体会議政策研究所編)

備考

再生可能エネルギーのまちづくり

中之条町は森林面積が87%を占め、米、こんにゃく、野菜などの農産物とともに、広大な山林から搬出される木材や林産物は町の産業の一翼を担っていました。しかし、近年の自然環境の変化や農林業の衰退などによって里山の荒廃が進んだため、野生動物による農作物被害などにより生活環境が脅かされています。東日本大震災を契機として、原発に代わるエネルギーとして中之条町には恵まれた豊かな自然があることに着目し、太陽光や小水力、バイオマスなど、地域に存在する資源を活用した循環型社会を構築していくため、地方自治体としての責任を果たして行く方針を打ち出しました。2013年6月議会において、再生可能エネルギーを積極的に活用し、電力の地産地消等の取組を通じて町の活性化を図ること等を目的に「再生可能エネルギーのまち中之条」宣言を採択しました。また、同じ6月に「中之条町再生可能エネルギー推進条例」を制定しました。

自治体による再生可能エネルギー活用事例

「再生可能エネルギーのまち」の取組として、太陽光発電事業をはじめ、小水力発電、木質バイオマス、その他の自然エネルギーを利用したさまざまな可能性に挑戦し、2013年には3箇所の太陽光発電所(うち自治体が事業主体となるもの2箇所)合計出力5MWが稼動しました。また、町の主要な耕地の一つである美野原台地(受益面積206ha)に農業用水を供給する農業水利施設「美野原用水」を利用した小水力発電事業も進められています。

木質バイオマス事業は、2013年度に事業化検討のための地域協議会を設立し、環境省、総務省などの国の支援を受けて検討を進めてきました。

中之条町では、その後新たに、2MWの太陽光発電所を2017年6月末に稼動するとともに、前述の小水力発電所は同年7月に稼動しました。

一般財団法人中之条電力の設立と活動

町内の太陽光発電所で発電した電力を活用し、エネルギーの地産地消を通じて地域活性化を図るため、単に売電するのではなく、地域に供給する仕組みをつくることを目的として、2013年8月に、町と民間の共同出資による法人を設立しました。2014年からは、町役場庁舎、総合体育館、小中学校などの公共施設に電力の供給を開始しました。電力を需要家に供給するうえで、太陽光など発電出力が変動する電源から調達する場合には、電力の過不足に対して、発電量と消費量を一致させるための管理・運営が必要となります。中之条電力では、こうした業務は専門的な知見を有する他の電力会社に業務委託を行っています。いくつかの新電力等がグループをつくり全体を1つの新電力とみなして、電力需給管理を行う仕組を代表者契約制度(又はバランシング・グループ)といいますが、中之条電力ではこうした手法を採用しています。

固定価格買取制度の見直し及び電力自由化への対応を図り、さらに今後も電力の地産地消の取組を通じて地域活性化に寄与するという一般財団法人の基本理念を堅持しつつ、その活動をさらに発展させていくために、一般財団法人中之条電力が100%出資する「株式会社中之条パワー」を設立しました。設立した中之条パワーは、その後小売電気事業者として経済産業省に登録され、一般家庭への供給開始を含む供給拡大に取り組み、ふるさと納税制度を活用した、「お礼の電力」にも取り組んでいます。これは、中之条町への寄付者と電力需給契約を締結したうえで、返礼品として電気を供給するものです。

電力自由化と地域新電力をめぐる動向

中之条電力が、地域住民から認知され、地域に愛される新電力に成長していくための取組として、町の実施する事業、イベントに協賛する活動を進めていくとともに、一般家庭を対象に、「節電行動有効性実証試験」を行いました。これは、電力自由化に先駆け、一般家庭への電力供給を見据え、応募者に対して、スマートフォンを通じて、電力使用状況を「見える化」すると同時に、電力逼迫時などを想定した節電要請を行い、これに対する各家庭のみなさんの節電行動の内容に着目した調査です。その結果、地域住民は地域の公益性のために節電行動を行う意識が高く、地産地消PPSにとってディマンドレスポンスが有効なツールとなりうることがわかりました。

現在、全国各地で地域新電力が相次いで設立され、または設立に向けた取組が進められています。電力供給だけでなく、さまざまなサービス向上と効率的な事業運営の可能性があり、こうした事業に自治体が関わることで、さらに付加価値を高め、地域住民に対する様々なサービスの提供が可能となります

電力地産地消における今後の課題

少子高齢化が進むなかで、子育て支援や高齢者対策、過疎化への対応、若者の定住など、行政が取り組むべき課題は多くなっています。また、産業の振興や農林業なども行政の重要課題です。自治体による地域エネルギーサービスとして、地域新電力にも、こうした課題解決への役割が期待されています。

太陽光、森林、水、温泉などの地域エネルギー資源は、再生可能エネルギーとして地域の活性化につなげるように活用されるべきであり、地域新電力は、これをもっとも有効に活用できる主体であり、地域住民のサービスにつなぐことができる主体であると思います。

中之条電力がわが国初の自治体中心のPPSとして設立されて以後、FIT制度の改正など地域新電力をめぐる状況も変化しましたが、今後とも電力の地産地消を推進するとともに、「地域活性化のために何ができるか」をテーマに、ひきつづき努力していきます。

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